6月中旬、気温が高くなり、特に日中は屋外でのランニングが辛い時期になってきました。
「夏の暑さが苦手ですぐバテてしまう」「今年の夏は暑さに強くなりたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。真夏のランニングには熱中症のリスクも伴います。熱中症を軽く考えていると危険度が増してしまいます。特に夏のランニングは正しい知識を持って、賢く行うことが重要です。
そこで今回は、「夏のランニングでバテる人が”暑さに弱い”原因2つ」をお伝えした上で、「”暑さに強くなる”ためのポイント12選」をお伝えしていきます。
しっかりと対策をして夏の期間に走り込みを行い、ライバルに差をつけましょう。
- 夏のランニングでバテてしまう人が”暑さに弱い”原因2つ
- 夏のランニングでバテてしまう人が”暑さに強くなる”ためのポイント14選
本記事の執筆者

ふかまると申します。元箱根駅伝選手、ランニング歴は20年以上。小学生〜大人まで指導経験があります。
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熱中症が起こるメカニズムを知ろう
まずは熱中症が起こるメカニズムについて簡単にご紹介していきます。なぜかと言うと、熱中症のメカニズムを知ることで暑さに弱い原因を知ることができるからです。
熱中症は主に身体の中に次のような状態が起こることによって引き起こされます。
- 脱水
- 塩分の不足
- 血液循環が悪くなる
- 体温が異常に上昇する(37℃以上)
まずはランニング中にこれらの状態を防ぐことが重要です。それではもう一歩踏み込んで、「体温が異常に上昇する」について解説します。
体温が異常に上昇する原因
通常、人間の体温は一定に保たれています。運動をすると筋肉で熱が発生するため、一時的に体温が上昇しますが、体温の異常な上昇を防ぐために発汗と皮膚血管拡張によって、熱を身体の外に出そうとします。
汗は皮膚の上で蒸発します。その際、気化熱と呼ばれる“液体が気体に変化する際に周囲の熱を奪う現象”によって体温を一定に保とうとしているのです。ところが、湿度が高いと汗の蒸発が制限され、体温が下がりにくくなる。そうやって、体温が異常に上昇するわけです。つまり、夏のランニングでバテてしまう人が”暑さに弱い”原因は主に次の2つだと言えるでしょう。
- 適切に発汗を促すことができない
- 気化熱を生みやすい状況を作り出すことができていない
それぞれについて見ていきましょう。
1、適切に発汗を促すことができない理由
理由は次の通りです。
- 体内の水分(血液量)が不足している
- 体内の塩分が不足している(塩分には水分を保持する機能があり)
- 汗腺が十分に発達していない
- 自律神経の乱れなど
特に血液量が減って血液循環が悪くなると、脳、心臓、肝臓、腎臓、筋肉といった重要な臓器や器官に十分な酸素と栄養が届かなくなり、これも臓器の異常を引き起こすことになります。
2、気化熱を生みやすい状況を作り出すことができていない理由
理由は次の通りです。
- 気温や湿度が高い場所や時間にトレーニングしている
- 気化熱を生みにくいウェアを着用している
そのため、なるべく走る環境を選びつつ、ウェアを適切なものにすることが重要になります。
真夏のランニングで”暑さに強くなる”ためのポイント12選
それでは以上を踏まえて、「真夏のランニングで”暑さに強くなる”ためのポイント12選」をランニング前・中・後に分けてお伝えしていきます。ご自身の状況に合わせてぜひ試してみてください。
【ランニング前のポイント6選】
- こまめな水分補給を行う
- 事前に暑さ指数(WBGT)をチェックし、無理をせずに運動強度を抑える
- 体調(睡眠不足など)を把握する
- 暑熱馴化するまでの数日間は運動量を抑える
- 吸湿性や通気性の良いウェアを着用する
- キャップやサングラスを着用する
【ランニング中のポイント5選】
- 走る途中で給水をこまめに行う
- 走る途中で水を身体にかける
- ロングランよりもスピード練習を優先する
- 走る場所を選ぶ
- 走る時間を選ぶ
【ランニング後のポイント3選】
- 氷のうで身体をアイシングをする
- アイススラリーを摂取する
- 食事をしっかり摂る
【ランニング前】”暑さに強くなる”ためのポイント6選
まず、ランニング前の”暑さに強くなる”ためのポイント6選をお伝えしていきます。
1、こまめな水分補給を行う
何を置いても一番重要なポイント。こまめな水分補給で水分と塩分を補給することが重要です。一度に吸収できる水分量は多くて200mlと言われています。そのため一度に大量に補給するのではなく、こまめに補給することが重要です。少なくともランニング2時間前からスポーツドリンクなどを少しずつ飲むようにしましょう。ランニング中に水分が失われて、血液量が減ってしまい血液がドロドロの状態になると、体内の熱をうまく放出できなくなります。



特に女性の方でトイレが近くなるので、あまり水分を摂らないようにしているという方がいらっしゃいますが、夏場は絶対NGです。
2、事前に暑さ指数(WBGT)をチェックし、無理をせずに運動強度を抑える
「暑さ指数」とは、 ①湿度、 ②日射・輻射など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。
暑さ指数が28を超えると熱中症患者が著しく増加すると言われています。そのため、暑さ指数をチェックしてトレーニング計画を修正することが大事。暑さ指数は環境省のサイトでチェックすることができます。





気温は低くても暑さ指数が意外と高いという日は油断大敵。しっかりと気温以外の項目もチェックするようにしましょう。
3、体調(睡眠不足など)を把握する
体調が悪ければ、適切に発汗を促すことができず、体に熱がこもりやすくなります。さらに内臓も弱っているため、不調をきたしやすくなります。たとえ、昨日の暑さに耐えられたとしても、今日体調が変わっていれば、同じ気温・湿度でも熱中症になるかもしれません。特に睡眠不足は注意したいところ。夏場は良いランニングは良い睡眠から生まれると言ってもいいでしょう。


4、暑熱馴化するまでの数日間は運動量を抑える
夏は滝のように汗が流れるもの。しかし、暑さに慣れていないと、汗腺が十分に機能を果たしてくれず十分な発汗をしてくれません。そのため、6〜7月は気温の割に熱中症の患者が多いそうです。暑熱馴化するには2週間ほど必要と言われています。そのため暑さを感じ始めてから2週間程度は運動量を抑えるようにしましょう。
また、「暑さに弱い」という方の中には6〜7月に無理をして積み重なったダメージで真夏を迎える頃には内臓が疲れ切っているということ少なくありません。
5、吸湿性や通気性の良いウェアを着用する
気化熱を生みやすい状況を自分で作るにはウェア選びは重要になります。できるだけ吸湿性や通気性の良いウェアを着用するようにしましょう。
6、キャップやサングラスを着用する
キャップやサングラスを着用することで頭に熱がこもることを防いでくれます。さらにはUV対策にもなるので、たとえ太陽が出ていなくても夏のランニングにはキャップやサングラスは必須と言えるでしょう。


【ランニング中】”暑さに強くなる”ためのポイント5選
次に、ランニング中の”暑さに強くなる”ためのポイント5選をお伝えしていきます。
1、走る最中で給水する
かつて「喉の渇きを感じたらすでに脱水状態である」と言われていましたが、それは科学的に否定されているそうです。しかし、「喉の渇き」がキツさを感じさせやすくするのも事実。
走る最中に喉が渇く前に給水をする必要はありませんが、自身の脱水状態を見極めて途中で給水をすることも大事です。ですが個人的にはペットボトルを持ちながら走ることはあまりオススメしていません。なぜなら、ランニングフォームが不自然に固まってしまうから。そのため、特にロングランの時にはランニングウォッチのSuica機能を使ってドリンクを購入するのもオススメです。


2、走る途中で水を身体にかける
特にインターバルトレーニングなどのポイント練習を行なっている際は深部体温が非常に高くなっているでしょう。そんな時は身体に手足に水をかけて、気化熱を生みやすい状況を作ることが重要です。
3、ロングランよりもスピード練習を優先する
炎天下の中のロングランは内臓や筋肉に思っている以上に負荷をかけてしまうもの。私自身、冬季と変わらないペースで行っていた時期がありましたが、翌日に大きくダメージが残ってしまいました。長期的な目線で見れば、かえってトレーニング効率を下げてしまっていたなと反省しています。トレーニングは必ず長期的な目線でみることが重要です。
4、走る場所を選ぶ
なるべく日光の当たらない場所を選んで走ることも重要です。屋内でランニングマシンを使用するのは個人的にオススメです。ランニングマシンであれば斜度を調整することができるので、短い時間でも効率よくトレーニングを行うことができます。また日焼け防止にもなるので、ランニングマシンは非常に有効なアイテムと言えます。





私は猛暑日のジョグはランニングマシンで行なっています。
5、走る時間を選ぶ
夏場は日が出ている時間が長いため、一日を通して気温が高くなっています。それでも早朝や夕方の時間帯は多少涼しくなります。特にロングランを行う場合は早朝に行うことをオススメします。
【ランニング後】”暑さに強くなる”ためのポイント3選
意外と見落としがちなランニング後の”暑さに強くなる”ためのポイント3選をお伝えしていきます。
1、氷のうで身体をアイシングをする
走り終えた後は深部体温は高いままになっており、体に熱がこもっている状況になっています。そのため氷のうを使って、足などを15分ほどアイシングしてあげるといいでしょう。リカバリーの質が高まり、翌日の疲労感がかなり違ってきます。
2、アイススラリーを摂取する
胃のなかで氷が溶けて液体になる場合、ただ冷たいドリンクを飲むよりも冷却効果があることが分かっています。さらに深部体温を下げるだけでなく、脳内の温度も下げる効果も。走る前に冷凍庫から取り出しておいて、走った後に飲めば、熱中症予防に効果的です。ただし飲み過ぎは内臓に負担をかけるので注意。
3、食事をしっかり摂る
最後になりましたが、基本的かつ最も重要なことはランニング後に食事をしっかり摂ることです。しかし、暑さの中を走った後は内臓が疲れてしまい食欲がなくなってしまう方も多いと思います。そのまま食べないでいれば、身体は消耗したエネルギーを筋肉を分解して得ようとするため、筋肉はさらに摩耗されてしまいます。そんな時は消化に良い、そばなどの麺類をしっかり咀嚼して栄養を摂取することが重要です。
まとめ
今回は「夏の暑さが苦手ですぐバテてしまう」「今年の夏は暑さに強くなりたい」という方に向けて、まず、夏のランニングでバテてしまう人が”暑さに弱い”原因を2つをお伝えしてきました。
- 適切に発汗を促すことができていない
- 気化熱を生みやすい状況を作り出すことができていない
その上で、”暑さに強くなる”ためのポイント13選をお伝えしてきました。
【ランニング前のポイント6選】
- こまめな水分補給を行う
- 暑さ指数(WBGT)をチェックし、無理をせずに運動強度を抑える
- 体調(睡眠不足など)を把握する
- 暑熱馴化するまでの数日間は運動量を抑える
- 吸湿性や通気性の良いウェアを着用する
- キャップやサングラスを着用する
【ランニング中のポイント5選】
- 走る途中で給水をこまめに行う
- 走る途中で水を身体にかける
- ロングランよりもスピード練習を優先する
- 走る場所を選ぶ
- 走る時間を選ぶ
【ランニング後のポイント3選】
- アイスパックで身体をアイシングをする
- アイススラリーを摂取する
- 食事をしっかり摂る
しっかりと熱中症対策をして夏の期間に走り込みを行い、ライバルに差をつけましょう。
それでは、また次回!