アシックス社から2022年6月に発売されたレーシングシューズ、「メタスピードスカイ+」、「メタスピードエッジ+」について気になっている方は多いのではないでしょうか?
結論から言うと、両者ともレーシングシューズとして非常に優秀なシューズです。そこで、そんな「メタスピードスカイ+」(以下「スカイ+」)、メタスピードエッジ+(以下「エッジ+」)の基本スペックだけでなく、前作からどのように進化したのかについてご紹介していきます。
実は私、前作「メタスピードスカイ」の愛用者の一人でした。そこで今回は皆様にいち早く使用感をお伝えするべく、「スカイ+」「エッジ+」をどちらも購入し、実際にトレーニングで数回使用してみました(ロード・トラック)ので、前作との違いも含めて、忖度なしに徹底レビューしていきたいと思います。
最後に「スカイ+」「エッジ+」どちらを買うべきか迷われているランナーの方に向けて、私なりの考えをお伝えしていきます。
- 「スカイ+」「エッジ+」基本スペック・サイズ感
- 「スカイ+」「エッジ+」前作からの改良点
- 「スカイ+」「エッジ+」を実際に使ってみた感想
- 「スカイ+」「エッジ+」「ナイキヴェイパーフライ」どれを買うべきか考察
本記事の執筆者

ふかまると申します。元箱根駅伝選手、ランニング歴は20年以上。厚底カーボンシューズ歴は3年以上です。
「メタスピードスカイ+」「メタスピードエッジ+」基本スペック
アシックス社の厚底カーボン入シューズ、「メタスピードスカイ」と「メタスピードエッジ」が2022年6月に生まれ変わり、新発売されました。
- 「メタスピードスカイプラス(METASPEED SKY+)」¥27,500(税込)
- 「メタスピードエッジプラス(METASPEED EDGE+)」¥27,500(税込)
前作同様、ストライド走法とピッチ走法のランナー向けに分けて展開されました。
モデル | メタスピードスカイ+ | メタスピードエッジ+ |
メーカー推奨 | ストライド型ランナー | ピッチ型ランナー |
重さ(27.0cmの場合) | 205g | 210g |
ミッドソール厚み | 前足部:28mm 後足部:33mm | 前足部:25mm 後足部:33mm |
価格 | ¥27,500(税込) | ¥27,500(税込) |
前作と共通している点
前作と共通しているのは次の3点です。
- 厚底のミッドソールに「Flyte Foam BLAST TURBO」(以下、「FF BLAST TURBO」)という軽量で高反発な素材が使われていること
- 全面にカーボンプレートが使われていること
- ロッカー構造が採用されていること
両モデルは前作と同じく「FF BLAST TURBO」の厚みや靴底前部のカーブの角度などによって差別化されています。
サイズ感
「スカイ+」のサイズ感は前作「スカイ」とほとんど同じだと個人的には感じました。若干ワイド幅がゆとりを持たせて作られていることもあり、よりフィットしたように個人的には感じました。
「エッジ+」のサイズ感は前作「エッジ」とほとんど同じだと個人的には感じました。「スカイ+」ほどワイド感は感じませんでしたが、問題なく履くことができました。
ただし、どちらもある程度の操作性が求められるので、紐はキツめに締めて足にフィットさせた方が良さそうです。(緩めに締めると接地の瞬間にブレてしまいます)



ちなみに私は「スカイ」では28.0cmを使用していましたが、「スカイ+」「エッジ+」共に28.0cmで問題なかったです。
「メタスピードスカイ+」「メタスピードエッジ+」前作からの改良点
アシックス公式サイトによれば、今回の新モデルは様々なアスリートからのフィードバックを基に改良されたようです。そこで、前作「スカイ」から「スカイ+」へ、「エッジ」から「エッジ+」へ改良された点についてお伝えしていきます。
ミッドソール
ミッドソールの「FF BLAST TURBO」を「スカイ+」は4%増量、「エッジ+」は16%増量することでクッション性と反発性を増しました。両者は一見あまり変わらないように見えますが、カーボンプレートの角度や「FF BLAST TURBO」の厚みの位置が異なります。


まず、「スカイ+」はカーボンプレートがカカトからつま先に向かって、やや水平から反り上がるような形状になりました。その分、反り上がったカーボンプレートの下部にFF BLAST TURBOの厚みが増したことで前足部の反発性がより強くなりました。
一方、「エッジ+」はカーボンプレートがカカトからつま先に向かって、緩やかに下がっていく傾斜からつま先にかけて少し反り上がるような形状になり、前足部の反発性と重心が自然と前に移動しやすくなる機能が両立されました。「エッジ+」は「スカイ+」と違って、カーボンプレートの下部にFF BLAST TURBOの厚みがなく、地面にダイレクトに近い感触を得られます。さらにロッカー機能(ゆりかごのように瞬時に転がる機能)により重心が移動しやすい設計になっており、足の回転数をさらに上げやすくなっています。
前足部のゆとり
前作よりも「スカイ+」は幅広な設計になっています。そのため、前足部のゆとりが増し、足先の窮屈感が解消されています。より多くのランナーに履きやすくなったと言えるでしょう。ですが普段ワイド幅の私も「エッジ+」は問題なく履けました。


アッパー
前作からアッパーの素材が変わり、伸縮性が増したことでよりフィットするように。さらに通気性が増したことでシューズの中のムレや不快感を軽減してくれます。


シューレース(靴紐)
前作からヒモが変更になり、ギザギザした形状になりました。固定感が増し、締めやすくほどけにくくなりました。厚底シューズ全般に言えることですが、操作性を求められるので、ややキツめに締めることをオススメします。


アウトソール
前作からアウトソールは前足部の部分がよりえぐれ部分が強くなっていて軽量化されています。


名称が入った
シューズの名称(「METASPEED SKY」「METESPEED EDGE」)が追加されました。今までは明記されていなかったので、「スカイ」と「エッジ」の見分けが付きやすくなりました。





名称に関しては皆さん「なぜ今までなかったのか」とツッコミが入りそうですが。。笑
「スカイ+」「エッジ+」を実際に使ってみた感想
それでは、「スカイ+」と「エッジ+」を数回使用してきましたので、それぞれ実際に使用した感想をお伝えしていきますね。
「スカイ+」の使用感・走り心地
まずは「スカイ+」の使用感と走り心地です。
先ほどお伝えした通り、私は前作「スカイ」を1年以上トレーニングやレースで使用していました。
そんな私が「スカイ+」を使ってみた率直な感想は、押し込んだ時の反発力、安心できるフィット感、しっかりとしたグリップがさらに進化していると感じました。
ミッドソールの厚みは変わっていないものの、前足部のクッション性が増したことで、足を押し込んだ時の反発力が格段に増したように感じます。それだけではなく、より少ない力で速いスピードを出すことができました。さらに走り終わった後の疲労感も少ないように感じました。速いスピード帯においては強い反発力と推進力を感じます。
アッパーのホールド感も前作「スカイ」よりも個人的には好みです。素材が変わり、少し伸縮性が増えたことや、それに加えて、横幅のゆとりができたことで足を入れた時のフィット感が強くなりました。(普段ワイド幅の私でも安心感がありました。)


不安点を強いて挙げるならば、カーボンプレートの下部に柔らかいフォーム材が使われているため、地面をダイレクトで掴む感覚が得られにくいという点です。前足部の適切なスポットで地面を捉えられなければ、接地時にクッションの柔らかい感覚を脳が認識するため、うまく地面を捉えることができなくなってしまいます。つまり、適切な接地が出来ていなければ強い反発を推進方向にうまく変えることができないどころか、強いエネルギーを足で受け止めなければならなくなります。
そういう意味では、前作に比べて少し安定性が少なくなったようにも感じます。おそらくヒールストライク走法(カカト接地)のランナーもフォアフットに誘導されるシューズになるでしょう。個人的には、カーボンプレートの下部にクッション材が使用されている点も含めて、ナイキ「アルファフライ」に近いシューズだと感じました。アルファフライと同様に、向き不向きが分かれるシューズになると想像しています(ちなみに私はミドルフット着地でアルファフライは履きこなせませんでした)。


「エッジ+」の使用感・走り心地
続いて「エッジ+」の使用感と走り心地です。
実は私、前作「メタスピードエッジ」は感覚が合いませんでした。その理由は薄底のような感覚があるのにも関わらず、厚底のような反発性があったので、スムーズに足の回転を速められなかったからです。
結論から言うと、そんな私でも今回の「エッジ+」は前作の「エッジ」と「スカイ」の良さをいいとこ取りしたようなモデルであり、非常に走りやすいシューズになっていました。
「エッジ+」は、「エッジ」からミッドソール自体の厚みが4mm増えたことで、得られる反発力が大きく向上したように感じました。そのため、より少ないパワーでスムーズに足の回転を速めることができたのではないかと想像しています。特に「スカイ+」と履き比べて感じたことは、同じ速度帯でも「エッジ+」の方がピッチを速められるという点です。「エッジ+」はロッカー構造(コロッと勝手に前に進む)が優れているため、より省エネで足を自動回転させることができるシューズだと感じました。
前作「スカイ」よりもクッション性に優れているため、操作性という点では「スカイ」に劣るような感覚もありますが、着地の瞬間にシューズの接地面を転がしながら、脱力してエネルギーを母指球に乗せることが出来れば、ほぼ力を使わずに足を回転させることができます。
次の画像を見て貰えば分かる通り、「エッジ+」の方が安定して高ピッチで走ることができました。さらに安定性という意味でも「エッジ+」の方が優れていると感じました。




厚底カーボンシューズを使いこなすには筋力が必要!
さて、今まで「スカイ+」や「エッジ+」のレビューをしてきましたが、大前提として、厚底カーボンシューズを使いこなす筋力がなければ、シューズの性能を活かすことができません。それどころか十分な筋力がなければ「シューズに走らされているようなフォーム」になり、ケガのリスクも増してしまいます。
そのため、大前提としてレースで使用するならば、体幹や股関節周りの筋力の強化は必須と言えるでしょう。そのためにはインターバル走や坂ダッシュなどのスピードトレーニングやウエイトトレーニングが効果的です。


「スカイ+」「エッジ+」「ヴェイパーフライ」どれを選ぶべきか?
私の個人的な好みとしては、「スカイ+」、「エッジ+」両方とも好きです。おそらく今後のトレーニングでは、両者を使い分けて使用すると思います。前作はどちらかというと「スカイ」を好んで使用するランナーが多かった印象ですが、今作は「スカイ+」と「エッジ+」に好みが分かれるのではないかと思いました。
それらを踏まえて、「スカイ+」と「エッジ+」さらに「ヴェイパーフライ」のどれをレースシューズに選べばいいかについて考察していきます。
メタスピードシリーズが「ヴェイパーフライ」より優れている点
厚底カーボンシューズでの王道といえばナイキの「ヴェイパーフライ」。実は私、以前にヴェイパーも使用していました。確かにヴェイパーは素晴らしいシューズです。そこで個人的に「メタスピード」シリーズが「ヴェイパーフライ」より優れていると思う点についてまとめてみました。
- 安定感が高く、シューズに走りを合わせなくて良い(特にエッジ+)
- 特にカーボンプレートの耐久性に優れている(保ちがいい)
- シューズの個体差が少ない
逆に言えば、メタスピードシリーズは前作より大幅に進化したことによって、それ以外の部分では王道「ヴェイパーフライ」と大差がないシューズになったと言えるでしょう。
「スカイ+」と「エッジ+」どちらを選ぶべきか?
「スカイ+」「エッジ+」どちらを選ぶべきかについては「走法(ストライド型・ピッチ型)」というよりも「接地の型(フォアフット・ミドルフット・ヒールストライク)」で使い分ける方がシューズの良さを活かしきれるのではないかと思いました。私が考える「接地の型」による使い分けは次の通りです。
- フォアフット → 「スカイ+」
- ミッドフット・ヒールストライク → 「エッジ+」
ちなみに、アシックスのイベントに登壇された黒崎播磨所属の細谷恭平選手はピッチ走法ですが「メタスピードスカイ+」を愛用されているそうです。
また、前作「メタスピードスカイ」を好んで使用していた方は、どちらかといえば「エッジ+」の方が合うのではないかと個人的には想像しています。
メタスピードエッジ+ ↓
メタスピードスカイ+ ↓
【7/17追記】
「スカイ+」と「エッジ+」を練習でさらに数回使用しました。
「スカイ+」は確かに上手く履きこなせる時は爆発的なスピードが出るのですが、長い距離を走るときに若干の不安定性が気になりました。(特に足首やふくらはぎへのダメージが気になりました。)
その点、長い距離を走る時には「エッジ+」の方が安定性はあると感じました。速いスピードでも「エッジ+」が使用できることが分かったので、今後のレースでは「エッジ+」を使用していこうと今は考えています。
(さらに使い倒した後にレビューを追記していきたいと思います。)
まとめ
今回はアシックス社の厚底カーボンシューズ「メタスピードスカイ+」と「メタスピードエッジ+」のレビューをさせて頂きました。
両者とも前作と比べて飛躍的に進化しており、今後、多くのランナーがトレーニングやレースで使用されるアイテムになるでしょう。個人的にも、「スカイ+」と「エッジ+」を使いこなしてランニングを楽しみながら、走力アップしていきたいと思います。
今後も「ふかまるRunning Blog」ではランナーのお悩みを解決していくような情報を発信していきますのでチェックして頂けますと大変嬉しいです。
それでは、また次回!