- 厚底カーボンシューズに興味がある
- 厚底カーボンシューズをうまく履きこなせない
- マラソン大会で自己ベストを更新したい!
今回はそんなお悩みを解決します。
- 厚底カーボンシューズによるケガのリスクとは
- 厚底カーボンシューズを使いこなすコツ3選
- レベル別のオススメ厚底カーボンシューズ
本記事の執筆者

ふかまると申します。元箱根駅伝選手、ランニング歴は20年以上。小学生から大人まで指導経験があります。
箱根駅伝やニューイヤー駅伝でほとんど全ての選手が着用している厚底カーボンシューズ。代表的なものはナイキの「ヴェイパーフライ ネクスト% 」やアシックスの「メタスピードシリーズ」など。
厚底カーボンシューズを履きこなせれば、腰高で接地時間が短くなり、より楽に足の回転スピードを高められるため、自身が思っている以上のスピードを出すことができます。特に長距離走は速く長く体を動かし続けるスポーツ。足がキツくなってきた後半では、シューズのカーボンが足の仕事量を担ってくれるため、失速を防ぎやすくなります。つまり、厚底カーボンシューズはレース中のあらゆる場面でランナーの走りをサポートしてくれます。
とはいえ、厚底カーボンシューズはいいことばかりではありません。使いこなせなかった時の身体への負荷は薄底シューズの何倍になります。しかも、厚底カーボンシューズは高額で頻繁に履くにはもったいない。できれば、ここぞという時にしっかりと使いこなしたいですよね。そこで、今回は厚底カーボンシューズを使いこなすコツなどをお伝えすることで、記録向上の参考にしていただければと思います。
厚底カーボンシューズによるケガのリスクについて
こちらの記事によると青山学院大学の原監督は「今までは下腿部のケガが多かったが、最近は厚底の影響で、でん部回りの故障が増えている」と仰っています。
普段から走り込んでいる箱根駅伝の選手でも、厚底カーボンシューズのマイナス面を受けてしまうということなのでしょう。そのため、ランニング初心者の方には厚底カーボンシューズは絶対にオススメできません。走りなれていないランナーの方にとっては、衝撃に耐えられずに肉離れに近い状態になってしまう可能性が高まるからです。
私自身も普段から厚底カーボンシューズを履いてトレーニングするとき、以前より楽に走ることができるようになっていますが、やはり今まで以上に股関節周りの負担は大きいように感じます。そのため、厚底カーボンシューズ対策として、いろいろと工夫をしてトレーニングやケアを行うようになりました。
そこで今回は、その他にもケガなく、そしてより効率的に厚底カーボンシューズを使いこなすためのポイント3選をお伝えしていきます。


厚底カーボンシューズを使いこなすコツ3選
厚底カーボンシューズを使いこなすコツは次の3つです。
- シューズのバネに足が使われる意識を持つ
- 軽い前傾姿勢を保ち続けるフォーム
- 体幹・股関節の筋肉を鍛える
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.シューズのバネに足が使われる意識を持つ
従来のランニングシューズに履き慣れている人は、厚底カーボンシューズを履いた時も「自分の足の筋力を使って走る」という意識を持ちがち。厚底カーボンシューズではシューズのバネ(たわみ)に足を委ねて、リラックスし、勝手に足が運ばれる(使われる)感覚を身につけることが重要です。
そのため、レースだけでなく、普段のトレーニングに取り入れて、厚底カーボンシューズに慣れ、「できるだけ力を使わず省エネの走り」を習得することが重要です。
ポイントは体幹、足の各関節を「ほどよく固定」すること。完全にリラックスするのでもなく、パワーを使って動かそうとするのでもない。「ほどよく固定」することで、着地時の重力エネルギーを、無駄なく推進力に変えることができます。



厚底カーボンシューズを履いていて、足底やふくらはぎがパンパンに張ってしまうという方は、このケースに該当する場合が多いです。
2.軽い前傾姿勢を保ち続ける
足の各関節を「ほどよく固定」することで自然と腰高のフォームになります。その時、体幹を固定していれば、ランニングフォームは自然と軽い前傾姿勢に。そのポジションをキープしたまま少し重心を前に傾けるだけで、踵から前足部に向けてスムーズに体重移動が行われます。
しかし、体重移動するといっても、アウトソールがフラットになっていると地面とシューズが面で接触するため、足首の機能をかなり上手に使わないと接地した瞬間にブレーキがかかってしまいます。その点、「ロッカー機能」が高い厚底カーボンシューズは、アウトソールが曲面になっているので、足首の機能を代用してくれるので、ブレーキがかかりにくくなります。(しかし、ロッカー機能が高い分、操作性が失われます。)
このように、シューズが接地の瞬間に勝手に転がっていくことをロッキングチェアのように「転がる」という意味で「ロッカー機能」と言います。勝手に転がって、推進力を生んでいければ、地面を蹴る必要がないので、筋力を使わずに消耗しないので、後半の失速も少なく長い距離を走れるというわけです。
ですが、その前傾姿勢をキープできる筋力がなければ腰が反り返ってしまい、推進力が上方向に分散され、ロスになるだけでなく、足への負担が増してしまいます。



厚底カーボンシューズを履いていて、前ももがパンパンに張ってしまうという方は、このケースに該当する場合が多いです。
3.体幹・股関節の筋肉を鍛える
厚底カーボンシューズを履きこなすには強化が必須です。1.と2.にも通じますが、最低でも次のような筋肉の強化が必要でしょう。
- 足の各関節(特に股関節)を「ほどよく固定」するための筋力。
- 前傾姿勢をキープするための体幹の筋力。
実際に厚底カーボンシューズを走って股関節や体幹を鍛えることもできますが、青山学院大の選手でさえも股関節周りのケガが増えたことからも、市民ランナーの方は基本的にはウェイトトレーニングなどの走る以外のトレーニングをする必要があるでしょう。


タイプ別オススメ厚底カーボンシューズ
厚底カーボンシューズを選ばれる際には、以下のポイントを注目するといいでしょう。
- ロッカー機能
- 反発性
- 操作性
先ほどもお伝えした通り、「ロッカー機能」が高いシューズは、足を地面に置くだけで勝手に転がるような感覚を覚えます。しかし、その分「操作性」は失われてしまいます。つまり、「ロッカー機能」と「操作性」は逆相関の関係と言えるでしょう。地面をしっかり捉えて走りたいランナーにとっては、「操作性」の高いシューズを選ぶべきだと思います。
一方、地面を捉えるというよりは、ピンポイントで点で捉えるタイプのランナーは「反発性」重視のシューズを選ばれるといいと思います。このようなランナーは比較的、フォアフット着地のランナーが多いように個人的には感じます。
いずれにしても、自分に合う厚底カーボンシューズを選ぶことが大事です。
それでは今回は私ふかまるオススメの厚底カーボンシューズをご紹介していきます。
結論から言うと、次の通りです。
- フォアフット → 「メタスピードスカイ+」「ヴェイパーフライ NEXT%」
- ミッドフット・ヒールストライク → 「メタスピードエッジ+」「メタスピードスカイ」「ヴェイパーフライ NEXT%」
- ロッカー機能重視 → 「メタスピードエッジ+」「ヴェイパーフライ NEXT%」
- 反発性重視 → 「メタスピードスカイ+」「ヴェイパーフライ NEXT%」
- 操作性重視 → 「メタスピードスカイ」
それではそれぞれのシューズの特徴をご紹介していきます。
ナイキ「ヴェイパーフライ ネクスト%」
一時、厚底カーボンシューズのシェア90%を占めた「ヴェイパーフライ ネクスト%」。反発性も高く、バランスの取れた厚底カーボンシューズ。
比較的、どんなランナーにも使いやすいシューズではありますが、どうしても点で捉えるような形になるため、接地場所が安定しなければ、エネルギーのロスを感じる人は意外と多いと思います。
アシックス「メタスピードスカイプラス」
ミッドソールにはアシックス史上最も反発弾性の高いFFBlast TURBOを高ボリュームで採用されています。柔らかく地面を捉えてから跳ね返されるような反発力を推進力に変えます。
「ヴェイパーフライ ネクスト%」よりも反発性を感じる分、操作性は低く感じます。個人的にはナイキ「アルファフライ」に近い印象です。
アシックス「メタスピードエッジプラス」
「メタスピードエッジプラス」は「スカイプラス」と同じく、反発弾性の高いFFBlast TURBOを高ボリュームで採用されています。
「スカイプラス」に比べて、反発性は劣りますが、ロッカー機能に優れているため、足を置くだけで、前に進む感覚が得られます。
アシックス「メタスピードスカイ」
前足部のカーブソール形状(ロッカー機能)が、走行中のエネルギーを節約し、レースの後半でもパフォーマンスを維持します。フラットなソールで足の動きを安定させ、効果的に身体を前方向へ推進させる効果を発揮します。
「スカイプラス」や「エッジプラス」に比べて、反発性では劣りますが、安定性や操作性に優れたシューズと言えるでしょう。




まとめ
今回は厚底カーボンシューズを使いこなすコツとして、次の3つをご紹介しました。
- シューズのバネに足が使われる意識を持つ
- 軽い前傾姿勢を保ち続けるフォーム
- 体幹・股関節の筋肉を鍛える
厚底カーボンシューズを履きこなせれば、腰高で接地時間が短くなり、より楽に足の回転スピードを高められるため、ランニングのパフォーマンスは格段に上がります。しかし、うまく使いこなすことができなければ、股関節周りのケガのリスクが高まってしまいます。
今回ご紹介させていただいた方法をお試しになった後は、体がどのような反応だったのか、心地よい疲労だったのか、などを必ずチェックしていただき、ケガなく厚底カーボンシューズのメリットを十分に活かし、パフォーマンスを上げていただければと思います!
以上、どなたかの参考になれば幸いです。
それでは、また次回!